退職代行モームリで脳裏に浮かぶ2つの現実
2025/04/21
4月ももうすぐ終わりです。
皆さんの会社の新入社員は順調に育っていますか?
4月2日の日経新聞に
退職代行モームリ、4月1日の依頼134人に倍増 新卒は5人
というタイトルの記事を見つけました。
要は、社会人初日を経験しただけで、退職代行に駆け込んだ新入社員が5人もいたということです。
世の中には他にも退職代行業者がありますから、全体ではもっとたくさんの新入社員がこのサービスを利用したと推測できます。
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こういう記事を見ると経営者界隈では、
「そういう大事なことは自分の口で伝えろよ!!!」
という恨み節にも似た声がたくさん上がります。
一人当たり採用費が平均100万を超える中で費用を捻出したり、新卒がある程度定着することを想定して、4月以降の事業戦略を描いてきた企業からすれば、この恨み節には共感できます。
採用活動における求職者の無断欠席、連絡遮断、音信不通、嘘をついて退職する社員の根っこも同じですね。
まさに
大切なことを自分の言葉で伝えられない大人が多すぎる問題
です。
私は、基本的に最近の若者は自分たちの世代よりも優秀だと思っていて、あまり日本に未来を憂いたりはしないのですが、大切なことを自分の口で伝えられない若者に出会った時にだけは、本当にこれで日本は大丈夫か、という気持ちになります。
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去年までの私ならこういった若者に憤慨し、界隈の経営者たちと愚痴ってしまうのですが、今年は少し違いました。
それは鈴木大介さんの『貧困と脳』という本を読んだことに起因します。
同書の詳しい説明は割愛しますが、私がこの本で学んだことは、脳の働きによって
「必死に頑張ってもできないこと」
「やる気があってもできないこと」
が存在するということでした。
言い換えるなら、
認知機能の低下、情報処理機能の低下による不自由な脳問題
でしょうか。
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身体に障害のある方は、健常者と同じように体を動かすことはできません。
それと同じことが脳の中で起こっていると想像してみてください。
買い物をする時、レジに表示された金額を覚えられない人はほとんどいませんが、もし、短期のワーキングメモリがバグっていて、数秒前に覚えた数字をレジから財布に視線を移す間に忘れてしまう脳だったら・・・
そういう方が確実に存在していて、我々と同じ社会で生活し、その多くは「当たり前のことができない人」というレッテルを貼られてしまっているそうです。
大切なことを自分の口で伝えられない大人も、実は「不自由な脳」を抱えながら生きているのかもしれないと思うようになった2025年です。
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退職代行モームリの記事を読んで脳裏に浮かんだ
①大切なことを自分の言葉で伝えられない大人が多すぎる問題
②認知機能の低下、情報処理機能の低下による不自由な脳問題
という2つのこと。
悩ましいのは、①が過ぎると②を抱える人を傷つけてしまう可能性があり、反対に②を学ぶと①に寛容になり過ぎて、彼らを増長させてしまうことです。
願わくば、「サービスなんだから使う権利がある」と宣う悪意の利用者にはならないでほしいし、世の中で退職代行サービスを生業にしている企業の皆さんには、利用者に説明責任を果たす力があるのか否かを事前にチェックするような仕組みを設けてもらいたいところです。
弱者を救済するサービスやサポートには大賛成ですが、似非弱者を大量に生み出し、国力を低下させるサービスやサポートには断固抗議したいですね。